なぜ蓄電所に第三者評価が必要なのか
一人の専門家では見渡せない複雑さ
——JGBEAが設立された理由
蓄電所案件を一人の専門家が全て評価できるか、という問いを立てたとき、答えは「おそらくできない」です。
電気工学の専門家は系統連系・設備仕様を深く知っていますが、市場制度の変化には追いつきにくい。市場制度の専門家は収益モデルを精緻に描けますが、消防規制・設備の物理的制約を見落とすことがある。ファイナンスの専門家はキャッシュフローを正確に計算しますが、電池劣化・設備変更リスクを定量化しにくい。
これが第三者評価が必要な根本理由です——蓄電所は、一つの専門性では見渡せない複数の専門領域が交差する事業です。
三つの「見えないリスク」
制度変化は短期間に相次ぎます。収益計画の前提が古ければ、参加要件を満たせない可能性があります。[1]
3市場は取引する価値が異なり、単純な足し算はできません。[2]
第三者評価が提供するもの
第三者評価の役割は、特定の案件を保証することではありません。判断に必要な情報を整理し、見落とされやすいリスクを可視化することです。
系統連系、設備構成、市場参加、収益前提、安全・保安、長期運用を横断して確認します。
市場が成熟するほど第三者評価の役割は大きくなる
JGBEAは、市場が「案件数が増える」段階から「案件の質を問う」段階へ移りつつあると考えています。接続検討件数の上限、市場参加要件の精緻化、サイバーセキュリティ要件は、案件の具体性や設備・運用の適合性が、これまで以上に問われることを意味します。
信頼できる案件と問題のある案件の差は、今後より明確になります。
JGBEAの立場
なお、第三者評価は、現時点で系統用蓄電所の開発や市場参加に一律に課されている法的義務ではありません。また、第三者評価は、法令上の検査・届出、系統連系手続、市場参加に必要な審査等を代替するものではありません。JGBEAは、制度・市場・設備・安全・運用を横断して確認することが、案件の質と透明性を高める上で有効だと考えています。
JGBEAは「評価・研究調査・政策提言・情報発信」を通じて、系統用蓄電所の健全な普及を支援することを目的に設立されました。
制度・市場・設備・安全・運用を横断して確認し、その結果をJGBEAの5つの評価軸である「安全性・運用信頼性・経済性・環境・持続性・系統価値」から整理することが、系統用蓄電所の価値とリスクを判断する上で重要です。
この記事のポイント
- 蓄電所は複数の専門領域が交差する複合事業
- 制度変化・収益前提・設備変更が見えにくいリスクになる
- 第三者評価の役割は保証ではなく判断材料の整理と可視化
- 第三者評価は一律の法的義務ではない
- JGBEAは5つの評価軸から価値とリスクを整理する
一般社団法人 日本系統蓄電所評価協会(JGBEA)について
一般社団法人 日本系統蓄電所評価協会(JGBEA)は、系統用蓄電所を設備単体ではなく、電力システムを構成する社会的インフラの一部として捉えています。
安全性、運用信頼性、経済性、環境・持続性、系統価値の5つの視点から評価体系を整理し、評価・研究調査・政策提言・情報発信を行っています。