需給調整市場・容量市場の公表結果をどう読むか
どちらも「容量」に見えるが、時間と単位が違う
——市場横断比較の落とし穴を避ける
需給調整市場ではΔkW・30分、容量市場ではkW・年という単位が使われます。どちらも設備の能力に関係しますが、売買している時間と義務が異なります。
2025年度の需給調整市場では、年間落札量289.5億ΔkW・h、落札額合計1,451億円と公表されました。[1] しかし、この金額を容量市場の約定総額とそのまま比較して、市場の有利・不利を判断することはできません。
市場データを比較する前に、単位、対象期間、商品、価格の分母をそろえます。
二つの市場は売っているものが違う
需給調整市場
特定の30分ブロック等で、指令に応じて出力を変えられる調整力ΔkWを取引します。
短期の柔軟性
容量市場
将来の実需給年度に供給力kWを提供できる状態を確保します。
年間の供給力
同じ1,000kWでも、30分の調整力と一年の容量確保契約では、拘束時間、指令、計量、義務が異なります。
公表表の四つの量を分ける
| 用語 | 意味 | よくある誤読 |
|---|---|---|
| 募集量・必要量 | 市場運営者が調達しようとする量 | 実際の約定量と同じと考える |
| 応札量 | 事業者が売りに出した量 | 提供実績と考える |
| 約定量・落札容量 | 市場で選ばれた量 | 実際の指令量・発電量と考える |
| 約定価格・平均単価 | 制度定義に基づく価格 | 異なる単位の価格を直接比較する |
2025年度需給調整市場の数字を読む
EPRXの事業報告では、2025年度の年間落札量は289.5億ΔkW・h、落札額は1,451億円、平均単価は2.5円/ΔkW・30分です。[1]
この年間落札量は、30分商品の約定ΔkWを時間に沿って積み上げた指標です。設備容量289.5億kWが存在するという意味ではありません。商品別集計では複合商品の重なり方にも注意します。
容量市場の結果は対象実需給年度を付ける
容量市場の約定結果には、対象実需給年度、約定総容量、エリア別約定価格、約定総額などが示されます。メインオークション、追加オークション、長期脱炭素電源オークションは別々に確認します。[2]
JGBEAの視点|比較できない数字を、無理に一つの順位へしない
市場規模、平均単価、落札量は、それぞれ別の問いに答える指標です。「最も儲かる市場」を公表結果だけで決めることはできません。
評価では、各市場の単位と義務をそろえ、同じ30分の設備出力・SOCへ落としてから重複と機会費用を確認します。
今回の要点
- 需給調整市場は短期の調整力、容量市場は将来年度の供給力を取引します。
- 募集量、応札量、約定量、実指令量は異なります。
- 2025年度需給調整市場の年間落札量は設備容量の総量ではありません。
- 容量市場結果には対象実需給年度とオークション種別を付けます。
- 異なる市場の公表額・単価をそのまま比較・合算しません。
第二期を通して
第二期では、系統接続、制約、事業体制、三つの市場、サイバーセキュリティ、公表データを、公開資料で確認できる範囲と個別案件で確認すべき範囲に分けて解説しました。制度は更新されるため、記事の情報基準日と最新の公式資料を併せてご確認ください。
参考資料・出典(2026年10月14日確認)
[1]電力需給調整力取引所(EPRX)「第3期事業報告(2025年度)」
[2]電力広域的運営推進機関(OCCTO)「容量市場 メインオークション約定結果」
[3]電力需給調整力取引所(EPRX)「取引実績の取りまとめ結果」