容量市場と蓄電池
使わなくても価値がつく
——ただし「必要な時に使える状態」が前提
「充電も放電もしていないのに収益になる」——容量市場の説明として、こういう表現をよく見ます。
半分正しく、半分危険なフレーズです。容量市場は確かに「電気を売った量」ではなく「必要な時に供給できる能力」に価値をつけます。
しかし「必要な時」に本当に供給できる状態でなければなりません。この義務を軽視すると、ペナルティリスクと運用上の矛盾に直面します。
容量市場とは何か
容量市場は、将来にわたって必要な供給力を確保するための市場です。OCCTOが対象実需給年度ごとに募集要綱・容量確保契約約款・業務マニュアルを公表しています。落札後に容量確保契約を締結し、契約上の義務を果たすことで、容量確保契約金額が交付されます。[1]
容量市場はkW価値(供給力)を扱い、卸電力市場のkWh価値(電力量)とは異なります。
蓄電池と容量市場——参加の前提条件
蓄電池は、充電しておけば必要な時に放電できるため、一定の要件を満たせば供給力として評価される可能性があります。しかし、設置すれば参加できるわけではありません。
- 対象とする実需給年度
- 期待容量の設定
- 参加区分に応じた実効性テストの要否・対応
- 容量確保契約上の義務
- 実需給期間中の運用制約
SOCの落とし穴——「待機」が難しい理由
「必要な時に供給できる状態」を維持するにはSOC管理が重要です。卸電力市場で充放電を繰り返すとSOCが下がり、容量市場が求める供給能力を確保できなくなることがあります。
「使わなくても価値がつく」のではなく、「使える状態を管理し続けること」に価値がつくと理解する必要があります。
他市場との運用調整——3市場は独立していない
容量市場で供給力を求められる場面では、供給指示への対応や市場応札に必要なSOCを確保する必要があり、卸電力市場で自由に放電できるとは限りません。需給調整市場で落札した場合は、調整力として確保しておく必要もあります。[2]
EMSが優先順位を反映して判断できるか、アグリゲーターとの役割分担が明確かが多市場運用の核心です。
容量市場は「安定収益」か
一定の価格が付くという意味では安定的ですが、前提条件があります。
- 正しく登録できる
- 参加区分に応じた実効性テストに対応できる
- 容量確保契約上の義務を果たせる
- ペナルティを防ぐ運用設計がある
これらを確認せずに「安定収益」と表現するのは危険です。
この記事のポイント
- 容量市場はkW価値(供給力)を取引する
- 参加区分に応じて、実効性テストの要否と契約義務を確認する
- 必要な時に供給力を提供できる状態を維持する
- SOC管理が他市場との運用競合を左右する
- 安定収益には、登録・実効性・義務履行・ペナルティを防ぐ運用設計が必要
一般社団法人 日本系統蓄電所評価協会(JGBEA)について
一般社団法人 日本系統蓄電所評価協会(JGBEA)は、系統用蓄電所を設備単体ではなく、電力システムを構成する社会的インフラの一部として捉えています。
安全性、運用信頼性、経済性、環境・持続性、系統価値の5つの視点から評価体系を整理し、評価・研究調査・政策提言・情報発信を行っています。