スポット市場と時間前市場はどう使い分けるのか
前日に骨格をつくり、当日にずれを直す
——二つの市場は競争相手ではなく補完関係
スポット市場と時間前市場は、どちらか一方を選ぶ市場ではありません。スポット市場で翌日の基本となる売買を組み立て、その約定量を販売・調達計画へ反映します。その後に変わった需要予測、価格、設備状況に応じ、時間前市場で売買を調整し、計画にも反映します。
蓄電池は短時間で充放電を変えられますが、SOC、出力、継続時間には限界があります。直前の価格だけを追うと、後のコマで必要なSOCを失うことがあります。
二つの市場の違いは「価格」より、「いつ、何を確定し、どこまで修正できるか」です。
スポット市場は翌日の基本計画をつくる
スポット市場では、翌日24時間を30分ごとの48商品に分けて取引します。通常、受渡日の前日午前10時に入札を締め切り、売り入札と買い入札を集めて各商品の約定価格を決めるブラインド・シングルプライスオークションです。[1]
蓄電所では、想定する価格曲線とSOCをもとに、どのコマで買い、どのコマで売るかを前日に組み立てます。
時間前市場は新しい情報を反映する
スポット市場後、天候、需要、発電量、設備故障、価格見通しが変わることがあります。時間前市場では、各商品の前日午後5時から受渡時間帯の1時間前まで売買できます。[2] 約定した量は販売・調達計画へ反映し、期限までに広域機関へ提出します。市場取引の締切と計画提出の手続は別に確認が必要です。[3]
約定方式も異なる
スポット市場
同じ30分商品について入札をまとめ、約定価格を決めます。入札価格ではなく約定価格で売買されます。
オークション方式
時間前市場
売りと買いの条件が合う取引を連続的に成立させます。時刻ごとに価格が変わります。
ザラバ方式
そのため、スポット市場の日平均価格と時間前市場の平均価格を単純比較して「どちらが有利」と結論づけることはできません。取引量、時刻、目的、成立可能性が異なります。
蓄電池での使い分け
スポット市場では、充放電サイクル全体と翌日のSOCを設計します。時間前市場では、価格差だけでなく、スポット約定後の設備状態と他市場の義務を見て売買を調整します。
JGBEAの視点|前日最適と当日最適を分ける
前日の予測精度だけを高めても、当日の変化へ対応できなければインバランスが増えます。反対に、時間前市場へ依存しすぎると、流動性不足や締切に左右されます。
評価では、前日計画、当日更新、取引権限、時間前市場の取引締切、計画提出期限、約定しない場合の手順を一つの運用フローで確認します。
今回の要点
- スポット市場は翌日の48商品を取引し、基本となる売買を組み立てます。
- 時間前市場は各商品を受渡時間帯の1時間前まで取引できます。
- スポットはオークション、時間前は連続取引で約定方式が異なります。
- 時間前市場で希望どおり約定する保証はありません。
次回予告
第11回では、同じ30分コマでも地域により価格が分かれるエリアプライスと、市場分断データの読み方を解説します。