需給調整市場の5商品は何が違うのか
速さが違えば、求められる設備も違う
——10秒から60分までを一枚で見る
電力の需要と供給のずれには、数秒で起きる細かな変動もあれば、予測誤差や設備停止によって長く続くずれもあります。一つの調整力だけですべてに対応することはできません。
需給調整市場では、変動の速さと役割に応じて、一次、二次①、二次②、三次①、三次②の五商品を取引します。2024年度から全商品で市場取引が始まり、現行の取引ガイドは2026年7月1日実施の第10版です。[2]
商品名の数字は優劣ではなく、対応する時間領域の違いです。
五商品は「どれだけ速く動くか」で分かれる
| 商品 | 応動時間 | 継続時間 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| 一次調整力 | 10秒以内 | 5分以上 | 極短周期の変動・電源脱落 |
| 二次調整力① | 5分以内 | 30分 | 短周期の変動・電源脱落 |
| 二次調整力② | 5分以内 | 30分 | 長周期の予測誤差 |
| 三次調整力① | 15分以内 | 30分 | GC後の予測誤差・電源脱落 |
| 三次調整力② | 60分以内 | 30分 | 主に再エネ予測誤差 |
数値はEPRXが2026年3月13日に更新した商品説明に基づきます。[1]
速い商品ほど、通信と追随性能が重要になる
一次・二次調整力では、指令や周波数変化に対し、短時間で出力を変える能力が求められます。PCSの応答速度だけでなく、計測、通信、EMSの制御周期、SOC余力が一体として機能する必要があります。
ΔkWとkWhを分けて考える
需給調整市場で中心に取引されるのは、指令に応じて出力を変えられる幅であるΔkWです。実際に指令を受けて充放電した電力量はkWhとして別に扱われます。
ΔkW
待機している調整可能な幅。約定した時間帯に指令へ応じられる状態を確保します。
能力の価値
kWh
指令により実際に増減した電力量。計量と精算の対象になります。
実動の電力量
蓄電池では、ΔkWを確保できても、SOCが足りなければ継続時間を満たせません。出力とエネルギー量を同時に管理します。
商品ごとに事前審査と評価方法が異なる
応動時間だけを満たせば参加できるわけではありません。指令方法、計測周期、通信、最低入札量、継続時間、事前審査、アセスメントなどの要件があります。具体的な条件は取引ガイドと商品別規程で確認します。[2]
JGBEAの視点|商品名から設備を選ばず、要件からシステムを設計する
「蓄電池は応答が速いから一次に向く」という一般論だけでは不十分です。実際にはSOC、計測点、通信、最低入札量、アセスメントまで満たす必要があります。
評価では、各商品の要件をPCS・EMS・計量・通信・運用担当へ割り付け、抜けがないかを確認します。
今回の要点
- 五商品は対応する需給変動の時間領域が異なります。
- 一次は10秒以内、三次②は60分以内など、応動時間が大きく異なります。
- ΔkWは調整可能な幅、kWhは実際に動いた電力量です。
- 商品ごとに指令、計測、事前審査、アセスメントが異なります。
次回予告
第13回では、2026年度からの前日取引化、30分ブロック化、機器個別計測・低圧リソース参入を整理します。
参考資料・出典(2026年9月11日確認)
[1]電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場とは」(2026年3月13日更新の商品説明)
[2]電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場に係る取引規程等の公表」(取引ガイド〈全商品〉第10版、2026年7月1日実施)