PCS・EMS・BMS・クラウド接続にどのようなリスクがあるのか
遠隔操作できる便利さは、遠隔から狙われる入口にもなる
——電力と通信を一つの設備として守る
系統用蓄電所は、PCS、BMS、EMS、監視端末、クラウド、アグリゲーターのシステムが通信でつながります。遠隔監視・最適制御に不可欠な一方、外部からの不正操作や通信停止の入口にもなります。
サイバー事故は情報漏えいだけではありません。充放電指令の改ざん、設備停止、保護機能への影響、同時多地点制御による系統影響につながる可能性があります。[1]
蓄電所では、情報セキュリティを電気設備の安全・安定運転の一部として扱います。
制御経路が長いほど、入口が増える
通信経路には、インターネット、VPN、専用線、保守用端末、メーカーのクラウド、APIなどが含まれます。通常運用の経路だけでなく、保守時に一時接続する端末や初期パスワードも確認します。
主なリスクは「止まる・誤って動く・戻せない」
停止
ランサムウェア、通信断、クラウド障害等で監視・制御できなくなります。
可用性
誤制御
権限奪取や指令改ざんで、意図しない充放電・出力変化が生じます。
完全性
情報流出
設備構成、アカウント、運転データが漏れ、次の攻撃に利用されます。
機密性
復旧不能
バックアップや手動運転手順がなく、障害後に安全状態へ戻せません。
復旧性
最低限確認する運用対策
アカウントを個人単位で発行し、多要素認証、最小権限、退職・委託終了時の削除を行います。ソフトウェア更新は、脆弱性修正だけでなく、制御影響を試験してから適用します。
ログは、誰がいつ何を操作したか、指令がどこで変わったかを追える粒度で保存します。通信断時には、安全側の出力、ローカル制御、手動停止、現場連絡を定めます。資源エネルギー庁は電力システム向けのリスク点検ガイド等を公開しています。[2]
サプライヤー任せにしない
PCS、EMS、BMS、クラウドを別会社が提供する場合、脆弱性通知、更新、インシデント報告、ログ提供、保守終了、データ保管の責任が分かれます。
JGBEAの視点|機器ごとの認証より、接続したシステム全体を見る
一つの製品が安全でも、共有アカウント、公開ポート、古いVPN、ログ不保存があれば全体は弱くなります。
評価では、資産一覧、通信経路、権限、更新、監視、復旧を設備ライフサイクル全体で確認します。
今回の要点
- サイバー事故は情報漏えいだけでなく、停止・誤制御につながります。
- PCS、EMS、BMS、クラウドの接続点ごとに対策が必要です。
- アカウント、更新、ログ、通信断時の安全動作を確認します。
- 複数サプライヤー間の通知・復旧・保守終了の責任を定めます。
次回予告
第22回では、2027年4月以降の新規系統接続に向けて示されているJC-STAR★1等のサイバーセキュリティ要件を、確定事項と検討中事項に分けます。
参考資料・出典(2026年10月2日確認)
[1]経済産業省「系統用蓄電池事業を取り巻くサイバーセキュリティリスクと対策」
[2]資源エネルギー庁「電力分野のサイバーセキュリティについて」(2026年7月24日更新)